妹との旅は今日で終わり。
カンクンの空港までは妹と一緒。
しかし、ターミナルが違うため、私は途中下車。
いよいよ、ひとりのメキシコ旅行。
妹から必要だからと、「すみません」と「お願いします」のスペイン語を教えてもらった。
すぐに覚えられない私は、手のひらに「ディスクルペ」「ポルファボール」と書いておいた。
1人になって空港に入ると、スイッチが入る。
ここからは私の旅だ。
やるっきゃないと。
自動チェックインが上手くできず、職員を呼ぼうとする。
しかし、すぐに「ディスクルペ」が思い出せない、手のひらを見る、やっと職員を呼べる。
しばらくの間、この工程は続く。
手続きを済ませ、国内線に乗り込む。
隣はにこやかな夫婦だった。
一度メキシコシティに戻るため、3時間の空の旅。
機内コンテンツの映画を見ようと作品を探す。
1つの映画に、手が止まる。
「リメンバー・ミー」こと、「COCO」である。
メキシコに行く前から日本での公開が始まり、話題になっていた。
メキシコを舞台に文化や音楽が楽しめると、現地の人の間でも話題だ。
お土産屋の中には、許可が出ているのかわからない、COCOの主人公ミゲルの描かれたギターが売っていたりする。
せっかくメキシコに来たのだからと、早速見始める。
そこには、メキシコならではの音楽やカラフルな街並み、服装、木彫りの人形、プロレスのマスク…とザ・メキシコが描かれている。
そして終盤は、自分のルーツや家族への愛が描かれており、機内ということを忘れて泣いた。幸いなことに、隣の夫婦は眠っていた。
メキシコに来る前に見れば良かったと、後悔していたが、メキシコで観れたことが良かったと思える出来事が次の日に待っていた。
オアハカに着いて、次の日。
事前に予約していたツアーに参加した。そのツアーは現地の工芸品や刺繍の工房などを巡れる、現地密着型である。
オアハカ州に根付いた、カラフルでキメの細かい文化に、作業や作品を見ているだけで幸せな気持ちになった。
移動途中のコレクティーボを待つ中、ガイドさんから、リメンバー・ミーについて聞かれた。
国内線の中で観たことを伝えると伝えると、「実はこれから行く工房に、ミゲルのおばあちゃんのモデルと言われている方がいるんです」と返ってきた。
まさか!こんなラッキーがあるのか。
リメンバーミーを観ておいて、
良かった。
そして、ワクワクである。
工房に向かうとその人は、料理を作っていた。
ミゲルのおばあちゃんは、工房の職人さんたちのパワーを支える、料理人であった。
映画の中では、マリアッチを追い払うパワフルなおばあちゃんではあったが、ここでは料理作りに精を出していた。
工房のアーティスト達はおばあちゃんの料理を食べて、カラフルで繊細な作品を生み出しているのだ。
帰国してからも、リメンバー・ミー熱が冷めず、死者の日について調べたり、作品の背景を調べたりした。
死者の日というのは、11月の初旬に行われる、日本でいうお盆のようなもの。ただ、メキシコのお盆は楽しく、盛大らしい。マリーゴールドが飾られたり、食べ物が飾られたり。
お盆に近いこの文化は、日本人にも理解しやすい。
亡くなってもなお、人々の心に生き続けるという感覚はどこの国も変わらないことなのだろうか。
四季も食べ物も違う日本とメキシコに、ちょっとした繋がりが見えた。